俎上の恋は二度跳ねる

サンキュータツオを氏の影響で読み始めたBLだが、中でも最も印象に残った作家は水城せとなさん。そして、表題は(少し変えてあるが)彼女の代表作とされる読み切りである。
大伴があれだけクールに今ヶ瀬を突き放しておきながら、その言語を貫徹できずに野獣になって彼を襲ってしまうあたりで、要するにこの作品はポルノグラフィなのだということがわかる。しかも、勢い余って襲い返されるあたりは、笑ってしまうほかない(リバというんですね。名前がついているとは...BL女子恐るべし。)。これだけ溜めて吐き出せばカタルシスも充たされようというものだ。タメの美学という意味でキングクリムゾンのスターレスを思い出した。溜めて、溜めて、限界まで溜めて、...もう我慢できない!...である。これがせとな節なのだろうか?
オタクたちは自らのエロチシズムの対象としてツンデレという言葉を生み出したが、これほど典型的なツンデレもないだろう。オタクが生み出した言葉を腐女子受肉化させた希有な例?と見るのは見当違いだろうか?

これだけ古典的な作品が商業資本の中で読めることは驚くべきことなのかもしれない。この粘り気は他にはほとんど見ることができない。これは売れるわけだ。勿論、作品としてだけでなく、ポルノグラフィとしても(笑)。