シャガールのユダヤ劇場

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要するに若き日のみずみずしい作品の紹介なのだが、文句のつけようがなくかっこいい。浅田氏の紹介する作品はどれも面白くてついていくだけで私のような素人でも覚醒した芸術の世界に立ち会うことができる。難点があるとしたら面白すぎることか。中毒性のあるドラッグと同じで、日常的な世界に戻れなくなる。

確かに氏のいうとおり、男女の対を描いた作品は素晴らしい反面、それ以上の展開が望めない。これに対し、ユダヤ劇場には分散的なパノラマのスケールがあって「おおっ!?」となる。
RPGの世界観を一枚絵で示したようなワクワクする感覚があるというと通俗的すぎるだろうか?しかし、私にとって群像を描いたパノラマはスケールの獲得こそが命だ。それに淡い色彩を基調に赤と青を効果的に使ったこの絵は面白いと同時にオシャレで、グッとくる。「いいねぇ!このゲーム絶対売れるよ!!」と思うのは俺がゲームバカだからなのか(でもそう思う)。アニメファンならアニメのオープニングだと思うだろうな。だって、この流れるような人々の登場の仕方はオープニング・ムービーそのものだもの。

私がベートーヴェンに憧れ続けているのも彼の持つシャープなパノラマの切り取り能力に衝撃を受けたからだろう。音楽に詳しい、というか音大を修了した人によるとベートーヴェンの楽曲はレンガ積職人のようでつまらないのだそうだが、レンガ積として見るのではなくて、ガラスとワイヤーフレームでできた構築物を取り出すと彼の楽曲ほど可憐でエロティックなクリスタルはないと思える。ベートーヴェンをフルプレートの重戦士ではなく、快活で可憐な少女や利発な少年として見ること?そうすると少女崇拝という意味ではオタク文化はベートーヴェンの正統の後継者ということになるのか?うーん、エロスの重力は振り切って、あくまで軽快さを求めたいんだけど...。それはいうまでもなく男たちの幻想の病を見ることでもある。そんなオチなのか(笑?