今月の憂国呆談
相変わらず田中康夫のほうが面白い。
特にいうべきことがないのだろう。
彼の言説がこれほど凪いでいるのは珍しい?
それとも慎重を要することが多い?
世之介は小説より映画のほうがはるかに面白い。小説は勿論原作だし、面白いのだが、拾い読みした限りだと、彼が凡庸に見える。つまり、映画は成功している。
高良氏は気合が入っていて、ファッション誌の表紙に出まくっている。この映画にかける意気込みが伝わってくる。
映画はスマート化のために国際色をカットしたかと思ったが、そうでもない。ただ、80年代までの日本がいかに鎖国状態だったかということはわかる。とにかく外への扉がない。映画に閉塞感がなかったのはおそらくサンバのおかげだ。満面の笑みで(演技で?小説でもそれほどうまくない設定だ)あまりうまくないサンバを踊る高良氏が、冷戦末期の閉塞感を解きほぐしている。実際に80年代に撮られた学生青春映画はフィルムに閉塞感が感じられ、これほど垢抜けていない。