噛み合わない香川真司

 マンチェスター・ユナイテッドで、相変わらず香川のプレイが周囲と噛み合っていない。楔のたてパスが入っても全部供給者に戻してしまうので、ゲームを見ていてストレスがたまる。パスを出してもことごとく「返品」されるのだから、パサーにしてみれば香川にボールを預けたくないだろう。バックスがボールを奪取してゲームを作ろうとしてもその基礎のところで腰を折られるのだからたまらない。
 香川にはボールを預けてもらったことへの信頼に応えなければという発想がない。フィジカルにもボールコントロールにも自信がないのか、強く寄せられるとボールをキープできないし、パスを大きくトラップミスしてボールを失う。これでは個人の能力を頼みにしたサッカーはできない。

 彼のプレイスタイルはダイレクトプレイが3〜4つ続く人とボールが高速で動くショートカウンターにだけ特化したもので、個人でボールを預けられて時間を与えられると途端に無力になる。ボールを保持できなくても、受け手がボールをディフェンダーの足が届かず、且つ味方のいる場所にボールを「弾けばいい」という発想なので、キレイなトラップができない。アンリやファン・ペルシのようなアーセナル・スタイルにはならないのだ。
 結局、彼の能力は高速ショート・カウンターにおける前線の真ん中でチャンス・メイクと得点をとることに特化したときに初めて花開くのだろう。彼を王様にしないとチームは機能しないのだ。マンチェスター・ユナイテッドでそれはできない。王になりたければ実力を証明し、監督とチームメイトの絶対的信頼を勝ち取らなければならないが、それを要求するのは無理がある。彼は脇役もこなせなければならないが、現状ではそれができていない。